東京都における扱い

 「東京都青少年の健全な育成に関する条例」は、18歳未満の未成年者から着用済みの下着等(「等」の意味は後述します)を購入する行為を禁止しています(第15条の2および3)。

 この規定に違反して未成年者から着用済み下着等を購入した場合は、30万円以下の罰金に処せられます(第26条)。

 また、未成年者に対してそれらを売却するよう勧誘した場合は、都職員または警察官から警告を受け(第18条2項9号)、それに従わない場合は30万円以下の罰金に処せられます(第25条)。

着用済み下着等の買受け等の禁止

 東京都の条例「東京都青少年の健全な育成に関する条例」は、未成年者から使用済みの下着、だ液、ふん尿を買い取る行為に関して、以下の条文で禁止しています。

第十五条の二 
1 何人も、青少年から着用済み下着等(青少年が一度着用した下着又は青少年のだ液若しくはふん尿をいい、青少年がこれらに該当すると称した下着、だ液又はふん尿を含む。以下この条において同じ。)を買い受け、売却の委託を受け、又は着用済み下着等の売却の相手方を青少年に紹介してはならない。
2 何人も、前項に規定する行為が行われることを知つて、その場所を提供してはならない。
(平一六条例四三・追加)

解説

 この条例を所管する部門(東京都青少年・治安対策本部総合対策部青少年課)は、条例の内容を説明する小冊子『東京都青少年の健全な育成に関する条例の解説』を作成・発行しています。

 その冊子には、まず、この条項の趣旨について、以下のように説明されています。

【解説】
 本条は、青少年が身につけている下着を買い取る大人が存在し、これらが高じて、青少年のだ液若しくはふん尿の売買も行われている実態を背景に、規定されたものである。
 安価で購入した下着を一度着用した(本人が着用したと称した場合も含む。)上で、それを高額で売却することにより簡単に多額の金銭を手に入れる行為を青少年が行い、それをきっかけに風俗関係の店に出入りするようになったり、犯罪に巻き込まれたりする事例が見られることになったのを受けて、平成16年の条例改正で新設された。

着用済み下着等の定義

 この条項により買取が禁止される「着用済み下着等」の意味について、東京都の解説書では、以下のように説明されています。

 第1項は、すべての者に対して、青少年から着用済み下着等を買い受け、売却の委託を受け、又は青少年に客として紹介することを禁止している。
 着用済み下着等として、「青少年が一度着用した下着又は青少年のだ液若しくはふん尿をいい、青少年がこれらに該当すると称した下着、だ液又はふん尿を含む。」と定義されているが、「一度着用した下着」とは、購入した状態のままではなく、一度以上着用した下着を指す。
 「下着」とは、上着の下に着る衣服で、特に、直接肌に着ける衣類をいい、かつ通常公衆の場所でそれのみを見せることのないものをいう。例えば、ショーツ、ブラジャー、パンティストッキングなどであり、靴下は含まない。
 また、「だ液若しくはふん尿」には、汗などの体液は含まない。
 最近では、いわゆる「生セラ」と称される、その時着用していた下着等を対面している相手に売却等をすることも見受けられるが、いつの時点まで着用していたかを問わず、一度以上着用した下着は、本条の対象となる。

 実際には青少年本人が使用した「着用済み下着等」でない場合でも、そのように称して売却等された場合には処罰の対象となります。

 なお、「青少年がこれらに該当すると称した下着、だ液又はふん尿を含む。」とあるが、これは、例えば、青少年本人が着用したものではない場合又は実際は着用していない場合であっても、青少年がそう称して売却等をしたときは、本条の対象となる旨明記したものである。

営利目的がある場合

 営利目的で買受等をした場合には、罰金がさらに高額になります。

 本条は、すべての者を対象とする規定であるので、買い受け、売却の委託を受け、又は着用済み下着等の売却の相手方を青少年に紹介することは、個人で行うか、組織的に行うかを間わず、罰則の対象となる。ただし、これらの行為を業として行った者は、それ以外の者より、高額の罰金を科される。

取引場所の提供

 着用済み下着等の売買を幇助する行為も、第2項の規定により処罰の対象となります。

 第2項は、第1項に規定する行為が行われることを知りながら、場所を提供する行為を禁止することによって、青少年からの着用済み下着等の買受けの禁止を徹底するものである。第1項は、青少年との行為を禁止したものであるので、第1項に掲げられている行為が、青少年以外の者同士のみで行われている場合は、本項の対象とはならない。
 「知って」とは、初めから事情を承知している必要はなく、客観的な状況からその行為を容易に理解できる状態であれば、知っているといえる。
 「場所」とは、屋内屋外を間わない。また、一時的な使用、あるいはレンタルルーム、一般住居等の居室、ホテル・旅館等の部屋などであっても、前項に規定する行為を行うために提供されていれば、場所にあたる。

着用済み下着等を売るよう勧誘する行為の禁止

 購入にいたらなくても、未成年者に対して下着等を「売ってほしい」と勧誘しただけで、条例違反となります。東京都では、下記のように定められています。

(青少年への勧誘行為の禁止)
第十五条の三 
 何人も、青少年に対し、次に掲げる行為を行つてはならない。
一 青少年が一度着用した下着又は青少年のだ液若しくはふん尿を売却するように勧誘すること。
二 性風俗関連特殊営業(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和二十三年法律第百二十二号。以下「風適法」という。)第二条第五項に規定する性風俗関連特殊営業をいう。)において客に接する業務に従事するように勧誘すること。
三 接待飲食等営業(風適法第二条第四項に規定する接待飲食等営業のうち、同条第一項第一号に該当する営業をいう。)の客となるように勧誘すること。
(平一六条例四三・追加、平二八条例五・一部改正)

 この規定に違反した場合は、都職員または警察官から書面(警告書)による警告を受け、それに従わなかった場合は罰金を科せられます。

解説

 この条項について、東京都の担当部署は、以下のように解説しています(抜粋)。

【解説】
 第1号は、青少年が前条で規制する行為の相手方となるように、青少年を勧誘することを禁じているものである。
 「下着」、「だ液若しくはふん尿」は、前条第1項と同義である。
 「勧誘」とは、勧め誘うことで、その形態は、直接に声を掛けることはもちろん、メモや名刺を渡したりすることも含まれる。つまり、勧誘を受けたことが青少年に明確に理解されるのであれば、手段は問わない。以下、第2号、第3号についても同様である。
(中略)
 本条は、青少年を勧誘する行為のすべてについて禁止するのではなく、第1号から第3号までに掲げるものに限定して、その勧誘行為を禁止したものである。本条に違反して、これらの勧誘行為を行った者に対しては、警告前置の上、30万円以下の罰金が科せられる。

○ 資料・引用元「東京都 青少年の健全な育成に関する条例の解説」2016年4月(東京都青少年・治安対策本部総合対策部青少年課)168頁から171頁