大阪府における扱い

 大阪府は、「大阪府青少年健全育成条例」によって、未成年者から着用済み下着を購入すること禁止しています。

未成年者からの着用済み下着の購入の禁止

 大阪府は、平成17年に大阪府青少年健全育成条例を改正し、未成年者から着用済み下着を購入することを禁ずる規定(第40条)を新設しました。

第四十条 (着用済み下着の買受け等の禁止)
 何人も、青少年から着用済み下着を買い受け、若しくはその売却の委託を受け、又はその売却の相手方を青少年に紹介してはならない。

 「青少年」とは、「18歳未満の者」を指します(第3条1項1号)。性別は限定されていないため、男女の別にかかわらず、また、同性の未成年者から購入した場合でも条例違反になると解されます。

 この規定に違反して未成年者から着用済み下着を買い受けた者は、30万円以下の罰金に処せられます。この罰金は交通違反の罰金と違い、刑事罰ですので、前科がつきます。

第五十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第十四条第一項、第十七条第一項、第二十条第一項若しくは第二項、第二十三条第一項若しくは第二項、第二十四条第一項、第二十七条、第四十条から第四十二条まで又は第四十三条第二号の規定に違反した者

「着用済み下着」の意味

 なお、「着用済み下着」の意味について、大阪府の公式ウェブページでは、つぎのように説明されています。

※着用済み下着…青少年が着用した下着をいい、青少年がこれに該当すると告げたものも含まれます。
大阪府/着用済み下着の買受等の禁止

 「青少年がこれに該当すると告げたものも含まれます」が意味するところは、
「実際には着用済み下着ではなくても、青少年から着用済み下着だと説明されて買った場合は、同様に処罰する」
いう意味だと思われます。

 しかし、この大阪府の説明にはやや疑問を感じます。

 着用済み下着ではない(が、青少年からそのように説明された)ものまで処罰の範囲を広げる場合には、一般に、以下の東京都の条例のような書き方をします。

東京都青少年の健全な育成に関する条例
第十五条の二 
1 何人も、青少年から着用済み下着等(青少年が一度着用した下着(中略)をいい、青少年がこれらに該当すると称した下着(中略)を含む。

 人に刑罰を与える法律は、何が犯罪になるかが明確に記載されている必要があり、警察や裁判所が勝手に言葉の範囲を広げて解釈することは許されない、というのが法律の大原則です(罪刑法定主義)。

 このため、上に例示した東京都の条例では、ちゃんと「青少年がこれらに該当すると称した下着…を含む」と明記してあるわけです。

 ところが大阪府の条例には、そのような規定がありません。

 ただし例外的に、古物商が買い受ける場合は、実際には着用済み下着ではなくても、そう説明されて買った場合は処罰される規定になっています。

第二十三条 古物商は、青少年から古物(青少年が着用した下着(青少年がこれに該当すると告げたものを含む。以下「着用済み下着」という。)を除く。)を買い受け、若しくは交換し、又は青少年から古物の売却若しくは交換の委託を受けてはならない。

 条文の文言によれば、この規定は「古物商」が買い受ける場合に限定された規定です。古物商以外の一般人が買い受ける場合は含まれないと思われます。

 規定がないにもかかわらず、府のホームページの説明では「青少年がこれに該当すると告げたもの」まで処罰の範囲を広げると述べているのですから、罪刑法定主義の観点からは適切な説明とは思われません。

 実際の運用がどのようになされているのか、大いに疑問を感じるところです。

靴下は下着にあたるか

 購入が禁止されている「下着」の定義については、府条例には説明がありません。ショーツ等が「下着」にあたることは確実ですが、たとえば靴下などはどうでしょうか。
 大阪府のウェブサイト等には明確な説明がないため、他の都道府県が発行している解説書を参考に考えてみます。
 たとえば東京都の場合は、担当部署が作成した解説書に以下のように説明されています。

「一度着用した下着」とは、購入した状態のままではなく、一度以上着用した下着を指す。
 「下着」とは、上着の下に着る衣服で、特に、直接肌に着ける衣類をいい、かつ通常公衆の場所でそれのみを見せることのないものをいう。例えば、ショーツ、ブラジャー、パンティストッキングなどであり、靴下は含まない。
(『東京都青少年の健全な育成に関する条例の解説』より引用)

 大阪府も、これに近い解釈がされるものと思われますが、実際の運用は不明であり、「靴下」が下着にあたるかどうか、などの点については、はっきりしたことはわかりません。

下着以外の物品について

 都道府県によっては着用済み下着のほかに、「未成年者のだ液、ふん尿」などまで買受禁止の対象を広げている都道府県もあります(東京都など)。
 しかし、大阪府の条例で買い受けが禁止されているのは「着用済み下着」のみです。

 もっとも、府条例で購入が禁止されていないものであっても、たとえば未成年者から唾液を購入する行為があり、その方法がわいせつ行為にあたる場合には、府条例による処罰の対象となる可能性があります。

第三十九条 (淫らな性行為及びわいせつな行為の禁止)
 何人も、次に掲げる行為を行ってはならない。
一 青少年に金品その他の財産上の利益、役務若しくは職務を供与し、又はこれらを供与する約束で、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。

 わいせつ行為があった場合の処罰は、懲役刑を含む厳しいものになります。

第五十二条 第三十九条の規定に違反した者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

 下着を購入するにあたり、いわゆる「生脱ぎ」(着用している下着をその場で脱いで売却する行為)などの経緯がある場合には、わいせつな行為があったとみなされて、重い刑罰に処せられる可能性があります。

勧誘の禁止

 実際に購入するに至らなくても、未成年者に対して着用済み下着を売ってほしいと言っただけでも、処罰される可能性があります。

第四十二条 (青少年への勧誘行為の禁止)
 何人も、青少年に対し、次に掲げる行為を行ってはならない。
 一 着用済み下着を売却するように勧誘すること。

 この勧誘行為をした場合の処罰は、購入した場合と同様の30万円以下の罰金です。

 勧誘の方法にはとくに制限がないため、たとえばフリマアプリのコメント欄に着用済み下着を売ってほしいと書き込んだだけでも、相手が未成年者であれば処罰される可能性があります。

 この罰金は刑事罰なので、前科がつきます。軽率な言動は避けることが賢明と思われます。